NPSとは?顧客満足度(C-sat,CS)との違いは?

数年前に話題になり、多くの会社で取り入れられたNPSですが、実際にそれを活用して成果を出したという方は少ないのではないでしょうか。
結局上手く理解できなかったとか、導入しようと思っていてなかなか手が回っていなかったという方もいらっしゃるかと思います。
そんな方々のために、今ではあまり語られなくなってきたNPSについて、改めて説明していきたいと思います。

NPSとは

NPSとはネットプロモータースコアの略で、その会社やサービスを友人や同僚に推奨するかどうかを11段階で評価するアンケート方法です。この質問内容から分かる通り、顧客の「推奨度」、言い換えるなら別の新規ユーザーを誘致する可能性を測定する指標なのですが、その後の購買率との相関が高いことから顧客ロイヤルティを測る手段として広く定着しています。

11段階というのは、0点を含む10点満点の採点のことで、0〜6を批判者、7〜8を中立者、9〜10を推奨者と捉えて計算するのが特徴です。
推奨者が占めるパーセンテージから、批判者が占めるパーセンテージを引いたものがNPSとなります。
例えば推奨者が55%、中立者が35%、批判者が10%だった場合は、55%-10%=45%となり、この45というスコアがNPSになります。

顧客満足度(C-SAT)との違い

まず、顧客満足度には2種類あると捉えてください。

問い合わせ対応についてトランザクションでアンケートを取る方法

まず1つ目は、問い合わせ体験の満足度を調査するものです。一般的にC-Satと言えばこちらを指すでしょう。
問い合わせの対応が完了した後に、その問い合わせ対応に満足したか不満があったかをアンケート収集するものです。

カスタマーサポートツールとして有名なzendeskの機能を使った場合、問い合わせメールが「解決済み」のステータスになった一定時間後に別途アンケートメールが送信され今回の問い合わせ回答が満足であったか不満であったかの2択で選択するようになっています。
この場合顧客満足度は、「満足」の数を全体回答数で割った数値で測定され、パーセンテージで示されます。
日本では「非常に不満」から「非常に満足」までの5択が好まれる傾向があり、この場合は満足+非常に満足/回答数でパーセンテージ測定します。

問い合わせの品質について質問をしているので、この数値が低ければ応対品質を向上することによって顧客満足度を上げられます。従って、カスタマーサポートやコールセンターの指標として用いるには適していると考えられています。
ただし、これは調査結果が低かった場合のみ目標数値になり得るものです。90%前後までいったらそこから先は応対品質を上げる努力をしても、向上のしようがなくなります。
その場合、オペレーターの評価や、チームとしての数値が低下していないか定点観測するのには使えますが、チームの目標数値としては適さなくなってきます。

NPSがサービスやブランド全体について質問するのに対し、C-Satは問い合わせ体験に絞って質問するものなので、本質的に目的が違うものだと言えます。

NPSC-Sat
対象サービス・ブランド・会社全般問い合わせ対応の品質
調査の尺度推奨度満足度
調査のタイミング一斉アンケート問い合わせ対応ごと
NPSとC-Sat(顧客満足度)の違い

NPSと同様に一斉アンケートを取る方法

問い合わせ対応の品質についてではなく、サービスの満足度について調査するケースもあるかと思います。この場合、あまりC-Satという呼称は使われず、「顧客満足度」と言われます。

この場合、NPSと顧客満足度の違いは「推奨度」について聞いているのか「満足度」について聞いているのかが最大の違いになってきます。

NPSが流行した背景には、顧客ロイヤルティ(再購入率と、他人への推奨)との相関が実験証明されている点にあります。どういった質問文言が最もロイヤルティと相関が強いのかを実験した結果が以下の図の通りだったそうです。

顧客ロイヤルティと相関する質問の順位

この調査によると、「その会社に満足していますか?」という質問はロイヤルティとの相関が非常に低かったという結果が出ていますので、この方式でわざわざ顧客満足度を別途取る効果は薄いと言えるでしょう。

NPSの考えるべき点について

本当に日本国内でも有効なのか

顧客ロイヤルティ、顧客の継続利用意向を知るための指標とされていますが、その根拠とされる調査はアメリカでおこなわれたものであり、信ぴょう性を疑う声も少なくありません。

日本国内でおこなうと異様にNPSが低くなる傾向があり、これは国民性の問題が大きく影響していると考えられます。要するに、日本人は特段感動するような体験をしていなければ10点満点中5点程度をつける傾向があり、批判者の数を押し上げているのではないかといった見方があります。
一方で、これは飽くまで「他人に推奨までしてくれるユーザーであるかどうか」を測定しているので、やはり日本においてNPSが低いのであれば、推奨傾向も低いのではないかとも捉えられます。

これについての考え方は「世界的なセオリーなんだからそのまま丸呑みしてみる」「疑わしいところがあるので、あらゆるアンケート方法を試して最もロイヤルティと相関する質問を採用する」の二択になるかと思います。

NPSはそれ単体では打ち手につながらない

まず、NPS単体でまともな分析結果は出せません。必死でアンケートを採取した結果が「-24」だったとして、それが高いのか低いのかも分からないでしょう。ベンチマークと比較すればある程度の目安にはなりますが、そこまで深い信ぴょう性はありませんし、そもそもNPSを改善する打ち手が見つかりません。

他の顧客情報と掛け合わせて、例えば男性20、女性-10となれば、女性の推奨度が低いという傾向が判明するので、女性向けの施策を打つのかそれともマーケティングとして男性のみに振り切るのかといった議論の基にすることができます。

NPSは、顧客情報や、他のアンケート結果と照合をして初めて真価を発揮する指標だと言えます。
NPS以外にも「○○という体験をしたことがありますか?」といったような質問に多数回答してもらい、自社サービスで何を体験した顧客が高いロイヤルティを持っているのか、何を体験した顧客がロイヤルティの低い状態なのかについて調査してみるのが良いでしょう。

ロイヤルティの低かった体験が洗い出せていれば、改善ポイントは一目瞭然です。地道にその改善に努めていくことによって、NPSが数値として上昇していき、それはロイヤルカスタマーを増やし、彼らは友人に推奨をし、新しい顧客を連れてきてくれます。